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長く釣りをしていていると笑えることにも遭遇します。
まだ釣りを始めてばかりの頃、久通(くつう)の堤防にコッパグレを釣りに行っていました。そこには、でっかいキツ(イズスミ)も居て、磯釣りの稽古になるので連日通ったものです。
私は釣りを始めたのが遅くて、塾を始めて7年目、まだ30歳になったばかり。頭髪は後退し始めていましたが、砂漠化現象は局部的でした。
久通には、モイカ(アオリイカ)釣りのおんちゃんやおじいが何人もいました。あの頃は、久通の港には藻が繁茂していてモイカがたくさん産卵に訪れていて、2~3㌔の大型がよく釣れているのを見かけて羨ましく思ったことがしょっちゅうでした。
モイカ釣り師たちは、アジをくくり付けて遠投し、道糸をリールのところで空き缶に巻き付け、置き竿にして魚信(あたり)を待っていました。よそ見をしていても大丈夫なので、座って釣り仲間とのんびりと談笑。モイカがアジに抱き付くと空き缶が倒れてカランカランとなって教えてくれる仕組みです。
私は、覚えたてのコッパグレ&大型キツ釣りに夢中で、毎日日にち堤防通いの釣り初心者暮らしを満喫していました。そんなある日のこと、モイカ釣り師の年配釣り師から言われました。
「おまんは、まだ若いに毎日釣りに来てまっことえい身分やのう。若いがやきに、ちゃんと仕事もせんといかんろうがよ。」
仕事もせんとのん気気ままに釣りばっかりしている風来坊に見えたのでしょうね。不労の青年を見かねてのお言葉。関係のないおんちゃんに身分を明かす気持ちになれなかった若い頃の自分は、苦笑い気味の愛想笑いをして、その場を離れ、ポイントを変えました。
星降る幾年(いくとせ)。還暦も過ぎ、そのおんちゃんと同じ年恰好になった今現在、あの頃とちっとも変わらず、毎日日にち堤防通いの気ままな暮らしを営んでいます。が、仕事をしていない若い衆(し)とは見なしてもらえず、定年退職して悠々自適の趣味ライフを堪能するお爺(じい)そのままなので、嫌口を言われたり、仕事につくように忠告されたりすることは無くなりましたとさ。
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