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(※写真付き釣りブログ:https://ameblo.jp/keitakun-2019/)
さしもの得体の知れぬ大物も、全力ダッシュの繰り返しで、筋肉に乳酸が溜まってきたようで動きが鈍ってきました。
重量感、スピード、持久力、パワフルさ、すべてにおいて、釣り師歴30有余年の私が未経験のもの。大勢のギャラリーさんたちも、想像をかき立てて色々なお魚さんの名前を出しては喧々諤々(けんけんがくがく)。
注目を浴びて緊張で硬くなりそうなもんですが、そんな余裕はなく、ひたすら一進一退の攻防を繰り返します。まるで、格闘技。生きるか死ぬかの真剣勝負。向こうにとっては本当に命がかかっていますからね。
ニロギ(ヒイラギ)を底近くを泳がせてのヒットなので、根魚(チャイロマルハタ)やフラットフィッシュ(ヒラメ・マゴチ)かとも思いましたが、走りの速さと持続力からするとどうも違います。真鯛(マダイ)、スズキの大物だとしても、ここまではしぶとく粘り強く、長時間頑張れるものではありません。う~む、これはやっぱり、サメか、大型エイ…。
どちらにせよ、姿を見てみんことには始まりません。野次馬根性丸出しのギャラリーの方たちも、その場から立ち去ることなく、興味深く私と大物とのファイトを熱い視線で見つめ続けてくれています。その数、10人以上。
「姿を拝まんことには帰れんよ。なんやろうのう。スズキやったら、超大物やけんど、どうもちがうみたいぜよ。」
少しずつ寄せることができ始めました。磯竿は根元からひん曲がり、今にもバキンと折れそうで怖くて仕方がありません。ゆっくりゆっくり、だましだまし、こちらに寄せてきますが、重いったらありゃしません。竿は「つ」の字を描いたまま。前には、40㌢のサンノジ(ニザダイ)にこの竿をへし折られて修理に出した苦い経験があるので、ハラハラし通しです。
いかん!相手は最後の力を振り絞るかのように、右側に逸走し始めました。岸壁のこちら側には、大型船が停泊しており、船尾下の水切りの丸い胴体部分に道糸が当たる角度に走っていきます。牡蠣(かき)に当たりでもしたら一巻の終わり。ソフトにソフトに、しかも、相手に重圧はかけつつの難しい局面を迎えました。
先端角っこに出て、竿を思いっきり左に寝かせ、お魚さんをこれ以上右に走らせないように努めます。ここでもラッキーなことに、走りを止めて進行方向をUターンしてくれました。
いざ、勝負時です。意を決して、竿を握る手に全力を込めて左後ろに大きくあおってはリールを巻き、魚との距離を近づけていきます。段々、リールのオレンジの道糸が増えてきました。そして、6ヒロ部分に付けているウキ止め糸が見えました。ギャラリーもわくわくした声を上げてくれます。
「だいぶん寄ってきたのう。なんじゃろうかのう。楽しみじゃねや。」
みなさん、帰らずに、40分も50分も私の背後で応援してくれています。なかには、「バラシ劇」の喜劇、私にとっては悲劇を期待している人もいるでしょうが。
渾身の力を込めて、今まで上ノ加江で80㌢超のヒラスズキとの格闘で培った竿さばきのテクニックを駆使して、強気で攻めまくります。大詰めが近づきつつあり、もうすぐ姿を現すかと思うと期待感はマックスになります。
ファイト開始時には、何度も諦めかかったり、弱気になって敗戦を覚悟したりしましたが、ようやくここまで持ち込むことができました。土俵際に追い詰められ、徳俵に足が掛かった状態から気魄で盛り返したお相撲さんの如き戦いぶり。
20㍍先の海面がもわあっと盛り上がり、魚体が一瞬見えました。エイではありません。サメでもありません。私には、でっかいスズキに見えました。しかし、そのまま寄せることはできずに、また潜られました。
「岸に寄せられて、嫌がっちゅうのう。」
見物客さんの一人が独り言ちています。本当にそうです。しかし、パワフルさは喪失しているので、あわてず、ゆっくりと寄せてきます。浮きました。うわあっ!あっ、あれは!
ブリです。しかも、でっかい!こぢゃんと。
「うおおっ。」
「青物やんか。すごい。」
「こりゃあ、逃がされんで~。」
ギャラリーたちから、口々に驚嘆の声があがりました。
To be continued(=続く)
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